三度目の茶屋
お婆ちゃんが一人で営んでいる茶屋に僕は入った。
テーブルが3つほどの小さな店で、にこやかなお婆ちゃんは親しげに話かけてくる。
この茶屋に来るのは夢の中で3度目だ。
お婆ちゃんは前と同じ事を話し、同じ事を訊き、同じ様におどろいている。
親しい態度とは裏腹に、全然僕の事など覚えていない。
そういう僕もいちいちそれを指摘する気もないので、適当に作り笑いで相槌を打つ。
「何を頼みますか?」と、お婆ちゃんはメニューを出した。
メニューは5つ程しかない。そして少し高い。
一度目に来た時は昼を食べた後だったが、断りづらかったので、あんみつを頼んだ。
ニ度目に来た時は、うどんを頼んだ。
だが今日はお腹も空いてないし、別段美味いとも思えないあんみつに800円も出したくない。
「あの、暖かいお茶をお願いします。」
にこやかなお婆ちゃんから一瞬にして笑顔が消えた。
多分夢の中であの茶屋に行くことはもう二度とないだろう。